うるがんは姫君の身を気づかつたnike。双親(ふたおや)と共に熱心な天主教(てんしゆけう)の信者である姫君が、悪魔に魅入(みい)られてゐると云ふ事は、唯事(ただごと)ではないと思つたのである ナイキ。そこでこの伴天連(ばてれん)は、輿(こし)の側へ近づくと、忽(たちまち)尊い十字架(くるす)の力によつて難なく悪魔を捕へてしまつた。さうしてそれを南蛮寺の内陣(ないじん)へ、襟がみをつかみながらつれて来た。
内陣には御主(おんあるじ)耶蘇(ヤソ)基督(キリスト)の画像(ぐわざう)の前に、蝋燭(らふそく)の火が煤(くす)ぶりながらともつてゐる nike air。うるがんはその前に悪魔をひき据ゑて、何故(なぜ)それが姫君の輿の上に乗つてゐたか、厳しく仔細(しさい)を問ひただした ナイキシューズ。
「私(わたくし)はあの姫君(ひめぎみ)を堕落させようと思ひました。が、それと同時に、堕落させたくないとも思ひました。あの清らかな魂(たましひ)を見たものは、どうしてそれを地獄の火に穢(けが)す気がするでせう。私はその魂をいやが上にも清らかに曇りなくしたいと念じたのです。
が、さうと思へば思ふ程、愈(いよいよ)堕落させたいと云ふ心もちもして来ますシューズナイキ。その二つの心もちの間(あひだ)に迷ひながら、私はあの輿の上で、しみじみ私たちの運命を考へて居りました。もしさうでなかつたとしたら、あなたの影を見るより先に、恐らく地の底へでも姿を消して、かう云ふ憂(う)き目に遇(あ)ふ事は逃(のが)れてゐた事でせう。私たちは何時(いつ)でもさうなのです。堕落させたくないもの程、益(ますます)堕落させたいのです。これ程不思議な悲しさが又と外(ほか)にありませうか